新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「私……っ、全然、湊の役に立てない……」
言葉と同時に涙が溢れた。
特別な、大きな幸せが欲しいわけじゃない。
ただ大切な人を大切にしたいだけなのに、いつだってそれが難しくて、遠いんだ。
「私、湊に迷惑をかけてばっかりで……こんなんじゃ、湊の奥さんでいる資格なんて──」
「俺は別に、桜に俺の役に立ってほしい……なんて思ったことはない」
けれど、続けて吐き出した言葉は、迷いのない声に遮られた。
「迷惑だとかも、今まで一度だって考えたこともない」
諭すような、怒ったような声色に顔を上げると、私を真っ直ぐに見下ろす彼の綺麗な瞳と目が合う。
「ただ、そばにいてくれるだけで、桜は俺の力になるんだ。桜はいてくれるだけで俺を支えてくれている。だから恩返しだとか、そんなの……今まで一度も、俺は桜に望んだことはない」
「で、でも……」
「愛してるから、支えたいんだ。だって本来、家族は、そういうものだろう。それじゃあ桜は、秋乃さんに恩返しをしてほしいと望んだことがあるのか? なにか、見返りを求めたことがあるか?」
温かい手が、私の髪を優しく撫でた。
秋乃とは、おばあちゃんの名前で、私がおばあちゃんに恩返しを望んだことがあるかなんて、そんなの聞かれなくても答えは決まっている。