新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「 結婚しよう 」
「おばあちゃん、遅くなってごめんね。調子はどう?」
十七時の風は、生ぬるい。
定時で仕事を終えたあと、下着の替えが詰まったバッグを抱えた私は通い慣れた道を急いだ。
目的地は、この辺りで三番目に大きな病院だ。
今、ここには私の父方の祖母が入院している。
「桜(さくら)ちゃん、今日も、お勤めご苦労様。今日はね、だいぶ調子も良かったのよ。毎日毎日、来てくれてありがとうね」
真っ白な廊下を歩いて祖母の待つ病室の扉を開けると、私を見たおばあちゃんは花が開くように微笑んだ。
部屋の中を明るくする、アイボリーのカーテン。
ほんのりと香る、消毒液の匂い。
おばあちゃんの笑顔を見ると、一日の終わりを実感する。