新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「それじゃあ、またあとで──」
けれど、そんなふうに互いに目を見合わせていたら、不意に鞄の中の携帯電話が震えた。
慌てて手に取り画面を見れば、そこにはおばあちゃんが入院中の病院の電話番号が表示されていて心臓が不穏に跳ねる。
──まさか。
そう思ったのは多分、いつか来るこの日を──私も覚悟していたからなのだろう。
通話ボタンを押して耳に宛てた私の声は震えていたかもしれないけれど、口から溢れたのはとても冷静な声だった。
「……はい、はい。わかりました」
電話口では看護師さんが忙しなく話していた。
──おばあちゃんの容態が急変した。一刻も早く病院に来てほしいという話だった。
最後はどれだけ冷静に受け答えできていたかはわからない。
首元で光る桜のチャームに手を添えた私は通話を切ると、ゆっくりと顔を上げた。