新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない


「どうした?」

「……おばあちゃんの容態が急変したそうです」


湊にそれだけを告げれば、彼はすぐに自身の腕時計を確認した。


「わかった。すぐに病院に向かおう」


言いながら彼が私の腰に手を添える。

だけど、私は──。

今にも駆け出しそうになる足を懸命にその場に堪えて、真っ直ぐに彼の顔を見返した。


「……桜?」

「おばあちゃんのところには、行きません」

「え……」

「今日は大切な仕事があるので、おばあちゃんのところには行けません」


キッパリとそれだけを言って、俯きそうになる顔を上げ続けた。

湊は驚いたように私を見たあと、今度は訝しげに眉根を寄せる。

< 219 / 273 >

この作品をシェア

pagetop