新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「どうした?」
「……おばあちゃんの容態が急変したそうです」
湊にそれだけを告げれば、彼はすぐに自身の腕時計を確認した。
「わかった。すぐに病院に向かおう」
言いながら彼が私の腰に手を添える。
だけど、私は──。
今にも駆け出しそうになる足を懸命にその場に堪えて、真っ直ぐに彼の顔を見返した。
「……桜?」
「おばあちゃんのところには、行きません」
「え……」
「今日は大切な仕事があるので、おばあちゃんのところには行けません」
キッパリとそれだけを言って、俯きそうになる顔を上げ続けた。
湊は驚いたように私を見たあと、今度は訝しげに眉根を寄せる。