新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「馬鹿なことを言うな。怒るぞ」
わかってる。
湊はそう言うだろうとも思ったし、彼は私をどうしたっておばあちゃんのところに行くように説得するだろうともわかっていた。
──だけど、
「私は……おばあちゃんと、約束したんです」
脳裏を過るのは二ヶ月前、おばあちゃんに言われた言葉だ。
具合の悪いおばあちゃんのそばにいたいと言った私に、おばあちゃんが言った言葉。
『そんなことをされてもね、私はちっとも嬉しくないわ』
『桜ちゃんは仕事に行きなさい。それが、社会人としてのあなたの責任でしょう』
今にも消え入りそうなほど小さな声なのに、そう言ったおばあちゃんの言葉は重く、力強かった。
『おばあちゃんは、桜ちゃんをそんな無責任な人間に育てた覚えはないの。だから、あなたはあなたのやるべきことを、最後まで立派に勤め上げなさい』
──それは、おばあちゃんから受けた、最後の叱責でもあった。