新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「俺は、妻のお願いに弱いんだ」
「社長……随分、幸せそうっすね」
口が滑った、というより、思ったことがそのまま口に出たのはサツマちゃんらしい。
「ああ、そうだな。俺はもう最初から、桜を俺の妻だと社内中に触れ回りたかったのに、桜の意向でできなくて……。今回、本意ではないにしろ、こうして公にできたことは俺としては有り難い」
「これで堂々と、桜を自慢して回れるしな」なんて続けた湊は、私の肩を抱き寄せた。
突然の不意打ちに顔が沸騰したように熱くなって、慌てて身体を離して抗議した。
「み、湊……っ」
「ごめん。つい、癖で」
けれど、少しも悪びれる様子のない湊は面白そうに笑うだけだ。
結局諦めて息を吐いた私は、改めて企画課のみんなに向き直った。
「あの、それで私としては……本当に図々しいお願いかもしれないんですが、これからもこれまでどおり……私を特別扱いせずにいてもらえたら、嬉しいです」
言い終えて頭を下げると、私は胸元で光る桜のチャームを握り締めた。
おばあちゃんのことは、お通夜や葬儀を終えたからといって簡単には割り切れない。
けれど乗り越えるためには目一杯時間をかけて……昇華していくしかないことを、私は両親のときに学んでいた。