新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「……彼女に、会いたい」
溢れた本音を拾ったのは秘書を務める近衛で、そのあとの出会いまでは実にスムーズに事が運んだ。
そして彼女と三度目の再会を果たし、彼女のことを愛しい、守りたい、支えたい……と思ったときにはもう何もかも手遅れだった。
彼女を、他の誰にも渡したくない。
気がつくと戸惑う彼女を押し切って、彼女を手に入れるために【結婚】という手段を選んでいた。
帰ってきて近衛に報告したら、さすがの近衛も驚いていたけれど。
それでも俺は今でも、あのときの自分の欲望に従った選択を、他の誰よりも褒めてやりたいと思っている。
✽ ✽ ✽
「……今日は、どうしてもお話したいことがあってきました」
彼女との結婚を決め、彼女の育ての親でもある祖母に結婚の挨拶に来た翌日。
俺は彼女に内緒で、再び彼女の祖母のもとを訪ねた。
優しく、朗らかに笑う彼女の祖母──秋乃さんからは、彼女に通じる柔らかさの中にある芯の強さを感じとれた。
「実は……桜さんとは以前にも、お会いしたことがあります」
突然の俺の訪問と告白にも、秋乃さんは少しも驚いた様子を見せなかった。
桜のご両親の事故の現場に、子供の頃に居合わせていたこと。
そして葬儀で初めて桜に出会い、桜に彼女と同じ名前を持つネックレスを渡したこと。
更には十数年の時を経て、学生時代の彼女が造った作品に出会ったこと。
そしてそれによって救われ、今の自分がいること──。
今回、三度目の再会を果たしたことまですべて、俺は秋乃さんに打ち明けた。