新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 


「あ、あの……」

「うん?」

「本気ですか?」

「もちろん。冗談でこんなこと、言うはずないだろう?」


そう言う彼は長い睫毛を伏せると頬杖をつき、初めて何かを隠すように横を向いた。

顕になった彼の耳は、ほんのりと赤く色づいている。

それに気づいてしまった私の顔も、今度は耳まで熱くなった。


「わ、私……」

「……さすがに初体験だな。こんなに緊張したの、初めてかも」

「……っ」

「とりあえず、今日は大体の引っ越しの日取りでも決めようか」

「え……?」

「だって今後、お祖母様が退院したときのことも考えたら、バリアフリーで少し広いところに住まないとダメだろう。ああ……だけどその前に、まずは桜の大切なお祖母様に挨拶に行かないと、だな。……なんか、そっちのほうが今より緊張しそうだ」


そう言って如月さんが、らしくもなく口元を手の平で隠しながら息を吐くから力が抜けた。

こんなこと言ったら失礼だけど、彼も私達と同じ人間なのだ。

彼の肩書と、ここまでの堂々とした立ち振る舞いで、なんだか……別世界の人なのかと思っていたけれど、違った。

それがなんだか嬉しくて、灯りが灯ったように心の中が、温かくなる。

 
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