新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「その前に……君の気持ちを聞かないと、前には進めないけど」
再び真っ直ぐにこちらを向いた如月さんを前に、心臓が飛び跳ねた。
……私の、気持ち。
まさか、今日会ったばかりの彼と結婚だなんて、これまでの私であれば考えられないことだった。
きっと、私の友達の誰が聞いてもバカだと言うし、呆れて怒ることもあるだろう。
私も実際、未だに今の状況が信じられないし、彼の言葉を真に受け始めている自分を、心の底からバカだと思う。
「私の、気持ちですか」
「……引っ越し先は、一緒に探そう。君が気に入ったところに住みたいし、もちろん、セキュリティはしっかりしたところで」
独り言のような彼の言葉に、思わず顔が綻んだ。
「なんだか如月さんって、面白い人ですね」
「……そう? まぁ、つまらなくはないと思うよ」
「ふふっ……。そうやって、自分で言い切るところ、結構好きです」
桜のチャームに添えていた手からも力が抜けた。
大切なことは、常識というモノサシでは測れない。
凝り固まった考えも、彼の強い瞳と迷いのない言葉が全部、吹き飛ばしてしまった。
今日、初めて会ったばかりの彼と結婚するなんて。
きっとそんなの、普通じゃない。
何より地位も名誉も美しさも、何ひとつ持ち合わせていない私が、彼と釣り合うとは思えないけれど……。