新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「──だから、一度やるって決めたなら、頑張ってみなよ。そのほうが桜らしいし、私は学生時代から、そういう桜が好きだもん」
カラン、とロイヤルミルクティの氷を揺らした蘭を前に、私はゆっくりと顔を上げた。
一度やると決めたら、簡単には諦めない。
それは学生時代からずっと、課題を前に掲げた私の、ポリシーでもある。
「ありがとう……蘭。私、頑張ってみる。せっかく貰ったチャンスだし、何より今は……彼の役に立ちたいとも思ってるの」
私の言葉に、蘭が意外そうに目を見開く。
如月さんの役に立ちたい。
もしかしたらそれは、この三週間で私の中に生まれた、一番大きな心境の変化かもしれない。
如月さんのご両親と顔を合わせたあとは、おばあちゃんが入院している病院へと二人で向かった。
突然現れた彼に、驚き固まっていたおばあちゃん。
私はおばあちゃんに如月さんとの結婚をどう説明するべきか最後の最後まで悩んでいたのだけれど、おばあちゃんを前にしたら頭が真っ白になってしまった。
『おばあちゃん、私、この人と結婚する』
ベッドの上で上半身を起こしていたおばあちゃんの前に立ち、開口一番にそう告げていた。
するとおばあちゃんは大きく目を見開いてから、肩を震わせ、大粒の涙を零したのだ。
私はおばあちゃんの涙に戸惑って、思わず言葉を失くして固まった。
如月さんを紹介したら、喜んでくれると思っていた。
何より、おばあちゃんが泣いているところなんて、一度も見たことがなかったのだ。
もしかして、彼氏もいないと言っていた私が急に結婚するなんて言い出したから、何か変なことに巻き込まれたのだと不安にさせてしまったのだろうか。
そもそも、喜んでくれると思っていたのは独りよがりな考えだったのかもしれない。