新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
『お、おばあちゃん、私──』
『突然のことで、驚かせてしまって申し訳ありません。僕は、如月 湊と申します』
けれど、慌てて事情を説明しようとした私の言葉を切ったのは、彼の穏やかだけど凛とした声だった。
反射的に顔を上げると、私の隣に立ち、おばあちゃんへと真っ直ぐに目を向ける如月さんがいた。
『実は桜さんと知り合ってから、まだ日は浅いのですが、僕は桜さんが今言ったとおり、彼女と結婚したいと思っています』
そこまで言うと如月さんは膝を折って、病室の床に躊躇なく、かしずいた。
そうしてベッドの上のおばあちゃんを見上げながら息を整え、ゆっくりと口を開く。
『僕はまだまだ未熟な人間ですが、桜さんを心から幸せにしたいと思っています。だから、桜さんを僕にください。あなたがこれまで愛してきたように、僕も彼女に一生涯、枯れることのない愛を捧げます』
柔らかに微笑んで、そう言った彼の言葉に涙が溢れた。
── 一生涯、枯れることのない愛を捧げる。
心臓が甘く高鳴ったのは、その言葉を口にした如月さんの目が真っ直ぐで、嘘を吐いているようには見えなかったからだ。
普通なら恋をして、恋人同士になった二人がゆっくりと時間を重ねてから辿り着くのが、"結婚"だと思う。
だけど恋すら通ってきていない私達の間に、きっと、愛情のようなものは存在しない。