新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
可愛らしくウインクをした蘭を前に、胸がギュッと締め付けられた。
蘭は私のおばあちゃんが倒れて、私がアクセサリーデザイナーになるという夢を手放してからも、ずっと変わらずに、私のそばにいてくれた。
そんな彼女に私は誰よりも幸せになってほしいと思っていたし、彼女の言うとおり……いつか本当に、蘭と蘭の愛する彼のために指輪を作ることができたら、この上なく幸せだと思う。
「ありがとう、蘭。配属されるのは企画部だから、まずはそこで、たくさんのことを学ぼうと思う」
「うん、頑張ってね。……とはいえ、まずは私が結婚相手を探さないと、指輪なんて夢のまた夢だけど」
「ふふっ、何言ってるの。蘭なら、すぐに見つかるでしょ」
「どうかなぁ……。今の私の周りにいるオトコなんて、ムカつくほど仕事のできるイジワルな上司くらいだし。そもそも今は仕事が楽しくてたまらないから、結婚なんてまだまだ先の話かも」
呆れたように溜め息を吐いた蘭を前に、声を零して笑ってしまった。
きっと、大丈夫。
自分で決めた以上、私は前を向いて歩いていくだけだ。
今はただ、自分と如月さんを信じて歩いていこう。
心の中で、そんな言葉を呟きながらコーヒーカップに手を伸ばす。
カップに口をつけると、ほろ甘く心地の良い苦みが口いっぱいに広がって、何故だか無性に彼に会いたくなった。
* * *
「如月さんって、三十一歳なんですね。じゃあ、私とは五歳差だ」
蘭とランチをした日の翌日、私は仕事終わりの如月さんに病院帰りのところを拾われた。
向かう場所は区役所で、目的は婚姻届の提出だ。
書面に書かれた彼の生年月日を見て、今更如月さんの年齢を意識した自分を改めて不思議に思う。