新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
ひとえにジュエリーブランドといっても、海外のものから日本のものまで様々だ。
SNSが発展した今では海外セレブが愛用しているブランドや、芸能人が身につけているブランドまで、ファッションに関して多様な情報を得ることができる。
その中で、ウェディングジュエリーのみを売りにしたLunaは古臭いイメージが定着し、若い世代には受け入れ難いブランドの一つになっていた。
「そんなとき、父親の昔からの知り合いで、デザイン学校で講師をしている人から、気分転換にうちの学校の卒業制作展を見に来ないかと誘われたんだ」
「え……」
「時代を知るには、若い感覚に飛び込むことも必要だ……と。俺は半信半疑で、誘われた卒業制作展に足を運んだ。だけどそこで、俺の根底を覆すようなセンセーショナルな作品と出会ったんだ」
早鐘を打つように高鳴る心臓は、何かを予見させている。
私は膝の上でギュッと拳を強く握ると、彼の言葉の続きを待った。
「それは、"人の感情"をアクセサリーとして表現した作品だった。喜怒哀楽、何十種類の感情を、一つ一つ丁寧に興して、魅力的に展示してあった」
──KOKORO(ココロ)。
思い出すのは私が卒業制作として取り組んだ、作品だ。
人の感情を、アクセサリーで表現する。
たった今、湊が言ったとおり……"心"というテーマで私が作ったもので、デザイナーになるという夢を直向きに追いかけていた私の、最後の作品でもある。