新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 


「衝撃だったよ。喜び一つとっても、笑顔や嬉し泣き、感動であったり、跳ねる鼓動が表現されていたり……。あんなにワクワクして夢中になって、アクセサリーを見たのは初めてだった」


私の卒業制作だった『KOKORO』は、あの年の最優秀賞を受賞した。

そのとき、審査をした先生方も、『とても胸が踊る作品だった』と言ってくれたけれど……。


「その作品を見たときに、気がついたんだ。お客様の感情に寄り添うことが、これからのLunaには必要なんじゃないか……って」


月のようにそっと、あなたの心に寄り添うジュエリー。

それは、湊が生まれ変わらせたLunaが掲げるブランドコンセプトでもある。

作り手がただ売りたいものではなく、お客様のニーズに合わせたジュエリーの提案。

そうして幅広い層の心を捕えたLunaは、今や国内外でも一目を置かれた、今一番勢いのあるジュエリーブランドに成長した。


「あのとき、あまりに感動した俺は、"KOKORO"の作者である子を新しいLunaのデザイナーとして迎えたいと講師に願い出た」

「え……」

「だけど、叶わなかった。"この作品の作者である子は、デザイナーにはなりません。今日もご家族の事情で、ここには来ていないので……" と、とても残念そうに言われたんだ」


湊の言葉に思い出すのは、あの日のことだ。

学生時代の集大成である卒業制作展当日は、おばあちゃんの手術日と重なって、私は会場に顔を出すことができなかった。

 
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