新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 


「桜……ごめん」

「え……」

「迎えに来るのが遅くなって、本当にごめん」

「そんな……」


そう言う彼は、何故か切なそうに眉尻を下げた。

不思議に思って首を傾げると、再び強く彼の胸へと引き寄せられる。


「みな、と……?」

「……ずっと、探してた。他の誰かに先に見つかっていなくて、本当に良かった」

「え……?」

「こんなに可愛くて良い子だったら、いつ、誰に攫われても可笑しくない。……でも、これからは俺が堂々と守れるし、支えられる。他の男が近寄ってくる心配もないし……というより、近寄ってきても問答無用で追い払えると思えば、最高に良い気分だ」

「……っ」


言い終えてイタズラに笑った湊は、面白そうに私の顔を覗き込んだ。

私の顔は火を吹いたように熱くなり、心臓は彼にも聞こえてしまいそうなほど、バクバクと鳴っている。


「それで、今ので、桜の質問の答えになった?」

「は……はいっ、でも、あの……っ」

「もう、良いところでお預けするのは勘弁してほしい。今言ったとおり、俺はもうずっと前から桜が欲しくて堪らないんだから」

「ひゃ……っ!」


グッと、再び私の身体を押し倒した湊は妖艶に笑った。

そうして私の首筋に歯を立てて、責め立てる。


「……っ」


甘い痛みがチクリと走って、身体の芯が、熱く震えた。


「み、湊、待って……っ。私──」


慌てて彼の厚い胸板に手を添えると、宝石のように綺麗な瞳が私のことを映して光った。


「どうした?」


──湊はまだ、気がついていないかもしれないけれど。

これまでずっと、恋愛とは無縁の道を歩いてきた私は、こういったことの経験がないのだ。


「桜?」

「……っ」


だけどそれを今、この場で口にしていいのかわからない。

二十六歳にもなって経験がないなんて……面倒くさいと思われるかもしれない。

 
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