新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「あ、あの、私……」
胸の前で震える手を握りしめると、私を組み敷く湊から目を逸らした。
彼を、困らせたくはない。
だけど今、彼にすべてを捧げるには持ち合わせた勇気が足りなくて、どうするのが正解なのか、わからなかった。
「わ、私、まだ……」
「……ごめん、少し、急ぎすぎたな」
「え……」
と、ぽつりと零した湊は、シーツに広がる私の髪を指ですくった。
「桜の気持ちを無視して、こういうことをするのは間違ってた。桜が俺を好きになって始めて……しなきゃ、意味がないよな」
そっと、私の髪に口づけた湊は寂しそうに笑うと、涙の乾いた頬を優しくなでた。
慌てて彼の手を掴んだ私は、必死に弁解の言葉を探す。
「ち、違うの……! 湊とするのが嫌なわけじゃないの……! ただ、まだ少し、怖くて……。私、こういうことをするのは、湊が初めてだから……その……」
「え……」
結局、正直な想いを口にすると、湊は一瞬だけ驚いたように目を見開いた。
やっぱり、経験のない女は面倒くさいと思われただろうか。
湊と釣り合う大人の女性とは程遠い自分が、どうしようもなく恥ずかしくて堪らない。