新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「彼と話して、彼の目を見て言葉を聞いて……この人になら、あなたを任せられると思ったわ」
「おばあちゃん……」
「改めて、結婚、おめでとう。あの小さかった桜ちゃんが素敵な人に嫁いでくれて、こんなに嬉しいことは他にない。おばあちゃん、もう思い残すこともなくなったみたい。だから安心して、彼と幸せになりなさい」
あまりに晴れやかな笑顔でおばあちゃんが言うから、私は泣きながら笑ってしまった。
彼となら……私達ならきっと、大丈夫。
再び胸元で光る桜のネックレスチャームに手を添えると、自然と顔が綻んだ。
……彼の待つ家に、帰ろう。
面会時間が終わり、私はいつも通り荷物をまとめて立ち上がると、「また明日ね」と約束してから病室をあとにした。
* * *
「おかえりなさい」
その日の夜、湊は二十三時過ぎに帰宅した。
玄関扉が開く音を聞いてすぐにポーチにやってきた私を見て、彼が驚いたように目を見開く。
「……ただいま」
品の良いチャコールグレーのスリーピーススーツのジャケットを無造作に腕にかけ、ネクタイを既に緩めた湊の表情にはほんの少しの疲れが滲んでいた。
日曜だというのに商談のために出ていただけあって、今日はいつもより、心なしか元気もないように見える。
会社が休みだった昨日も何度か仕事の電話が掛かってきていたし、日頃の疲れも溜まっているのかもしれない。
「明日はLuna初出勤だし、先に寝ていてくれてよかったのに」
「ううん。私が待ちたくて待ってたの。お仕事、お疲れ様でした。お風呂にお湯、ためようか?」
スーツのジャケットを受け取りながら尋ねれば、湊がピタリと動きを止めた。
思わず首を傾げて彼を見上げると、ゆっくりと伸びてきた手がそのまま後頭部に廻される。