新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「桜は、唇まで桜色だな」
湊は、私にはまるで手に負えない人だ。
こんなの……いつまで耐えられるんだろう。
毎日これじゃあ、ドキドキしすぎて心臓がどうにかなってしまいそうだ。
「さぁ、いつまでもここにいたら冷えるから、とりあえず中に入ろう」
ごく自然な仕草で私の腰に手を添えた湊は廊下を歩いて、リビングに続く扉を開けた。
だけど私は高鳴る心臓が少しも収まってはくれなくて、彼の顔を見ることすらままならない。
「あ、あの、私……」
「そうやって、いちいち可愛い反応をされると、もっとイジメてやりたくなる」
「え……っ!?」
「おいで。とりあえず、一旦、抱き締めさせて。満足したら、バスルームに向かうから」
そう言って、私の手からジャケットを奪った湊は、それを一人がけのソファーの背に放り投げた。
二十五畳ほどのリビングには一人がけのソファーがふたつと、三人がけのソファーがひとつ。
湊は三人がけのソファーに腰掛け、長い息を吐いてから、再度「おいで」と私のことを手招きした。
今、彼のもとへ歩を進めたら、心臓はドキドキしすぎて本当に爆発してしまうかもしれない。
……そう思うのに。
彼に真っ直ぐに見つめられると、抗うことはできなかった。
「おいで」
「し……失礼します」
結局、緊張が限界に達した私は変な挨拶をしてから遠慮がちに彼の隣に腰を下ろそうとした。
だけど、彼の目の前まで来た直後──。
「ひゃ……っ!?」
グッと腕を掴まれて、彼の太ももを跨ぐように向かい合わせに座らされ、再び彼に捕まった。
予想外のことに身体は沸騰したみたいに熱くなって、慌てて必死に抵抗を試みる。