新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「……どうした?」
ジッと自分を見つめる私を不思議に思ったのだろう。
首を傾げた湊は瞳の奥を覗き込むように、私の様子を窺った。
「……ううん、なんでもないよ」
それに私は緩く首を横に振って、笑ってみせる。
湊は怪訝そうに眉根を寄せたけれど、続く言葉を催促することはしなかった。
……湊が私に話さなかったことなら、私から敢えて彼に尋ねる必要はない。
少なくとも彼が私とおばあちゃんを想って動いてくれたのだということだけはわかっているのだし、それだけでもう十分だ。
今、彼の顔を見たら不思議とそんなふうに思えて、ひとりで考えていたことは全部、どうでもよいことだと思えた。
私は湊を疑わない。
彼はきっと私を裏切らないし、私はまだ出逢ったばかりの彼を、信じることに決めたから。
「……挙式は、秋乃さんの体調が万全に整ってからにしよう。焦る必要はないし、俺の両親もわかってくれているから、桜は何も心配しなくていい」
穏やかな声色でそう言った湊を前に、心には淡く優しい明かりが灯った。
湊は私が、結婚式の心配をしているのだと勘違いしたのかもしれない。
……やっぱり、湊を信じることは間違っていない。
どこまでも優しい彼に対して胸いっぱいに愛しさが溢れ出し、私は必死に涙を堪えながら「ありがとう」と頷いた。