悪しき令嬢の名を冠する者
第1章「スイートピー」
第1輪*side レイニー*
髪を切られた。大事に大事に伸ばしてきた黒髪が視界の端でハラハラと揺れる。ゴミへと変わり果てた漆黒は床の上に散乱していた。
「どうしてですの……」
囁いた言葉は獣のような怒号に掻き消される。向けられた殺意が私を貫いていた。
粗暴な手に腕を掴まれる。懸命に逃れれば、幾重にも重なった悪意が行く手を阻んだ。
「いや、いやよ……私は死にたくない……皆さん勘違いなさってるわ……私、なにもしてなくてよ……?」
「ああ、お前は何もしなかった。だから俺達レジスタンスが動いたんだ」
「どうしてですの……? 私、皆さんに恨まれるようなことはしていませんわ。きっと、お話すれば分かる筈です……」
「貴女には永遠に分からないでしょう。姫は、この国を案じたことはありますか?」
「私は、いつでも民を思い、国を憂いています……!」
「やはり貴女は姫でしかない。それでも悪には変わりないのです」
「意味が分かりませんわ……」
この世で一番安全だった筈の城で窮地に立たされる。剣を構える男達が私を取り囲み、先陣を切っていた男が私に言葉をぶつけてきた。
「どうしてですの……」
囁いた言葉は獣のような怒号に掻き消される。向けられた殺意が私を貫いていた。
粗暴な手に腕を掴まれる。懸命に逃れれば、幾重にも重なった悪意が行く手を阻んだ。
「いや、いやよ……私は死にたくない……皆さん勘違いなさってるわ……私、なにもしてなくてよ……?」
「ああ、お前は何もしなかった。だから俺達レジスタンスが動いたんだ」
「どうしてですの……? 私、皆さんに恨まれるようなことはしていませんわ。きっと、お話すれば分かる筈です……」
「貴女には永遠に分からないでしょう。姫は、この国を案じたことはありますか?」
「私は、いつでも民を思い、国を憂いています……!」
「やはり貴女は姫でしかない。それでも悪には変わりないのです」
「意味が分かりませんわ……」
この世で一番安全だった筈の城で窮地に立たされる。剣を構える男達が私を取り囲み、先陣を切っていた男が私に言葉をぶつけてきた。