悪しき令嬢の名を冠する者
「フィン、私は大丈夫よ」

「レイニー様」

「二度は言わせないで。靴を持ってきてちょうだい」

「分かりました」

 押し倒された際、ベッド脇に散乱した靴を手に彼は跪く。慣れない手つきで靴を履かせる様は申し訳なさを如実に表していた。

「レイニー様……」

「大丈夫だと言ったでしょう」

 何故、彼が泣きそうな顔をしているのだろう。眉を顰め、何か言いたげにしては口を閉ざすフィン。

 私はそれを無視して、ガストン様の前に立った。

「ガストン様、御自分が何をされたか分かっておいでかしら?」
< 100 / 374 >

この作品をシェア

pagetop