悪しき令嬢の名を冠する者
「君は振り返ると思っていたよ」

「素顔を見せてくれるとは思ってなかったわ」

「やっぱりやめるつもりは無いんだね」

「ええ」

「また手紙を送るね」

「待って! 貴方は誰なの?」

「それは教えられない」

 彼が翻したローブを掴み引き止める。私の手をいなしたかと思えば甘い囁きが鼓膜を震わせた。

「でも、いつでも傍にいるから」
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