悪しき令嬢の名を冠する者
「ずるいわ!」

「ごめんね」

「待っ……! きゃっ!?」

 口先だけの謝罪を残し彼は去っていく。追いかけようと足を踏み出せば、ヒールが折れた。神はあちらの味方だったらしい。

「私は、また負けたのね」

 囁きは闇に消え、彼の姿も共に溶けてしまった。
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