悪しき令嬢の名を冠する者
「お前、本当に男前だよな。また背伸びた?」

「はい。一七〇を越しました」

「すくすく育ち過ぎて美少年じゃなくなってきてるよね~、三年前はおチビちゃんだったのに」

「十四で一七〇。なのに変声期はまだなんだな」
「はい」

「アンバランスだよね」

 ベルナールに同意を求められ思わず頷く。ふと視線を落とせば皸だらけの手に眉を顰めた。

「ベルナール」

「ん?」

「お前、最低」

「なんで!?」

「自分で考えろ」

 レイニー様に指摘された皸一つない指先。にも関わらずベルナールは懲りないらしい。相変わらず綺麗な手が少しばかり憎らしく思えた。
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