悪しき令嬢の名を冠する者
「やっぱり分かんないなぁ。
 正直エレアノーラ嬢が、嘘を吐いたり、演技したりするのが上手そうに見えないし」

「レイニー様は、やる時はやる御方だ」

「ゴメン、ゴメン。怒んないでよ」

「怒ってない」

「ホント、フィンはレイニー様が大好きだよねー。その目が曇ってなきゃいいんだけ……痛っ!? なに!? なんで今、俺の頭叩いたの美少年!?」

「ベル、俺は眠いって言ったよね? なんでフィンを揶揄ってんの? もしかして俺に対する嫌がらせだったの? それとも自分が水仕事したくないから任務やらせるの嫌とかって理由? だったら……」

「ロビン、そこま……」

「フィンは黙ってて」

「う、うん」

 物凄い剣幕で奥歯を噛み締める彼を止めるべく言葉を紡ぐ。しかし低い唸り声には敵わなかった。

 下手に手を出しては噛まれてしまう。俺は呆け顔のベルナールを横目に口を噤んだ。
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