悪しき令嬢の名を冠する者
「私は花が好きだったのよ。綺麗で、いい香りがして、愛らしくて」

「レイニーは花が嫌いだと聞いたことがある」

 誤魔化されているとでも思ったのだろうか。彼は顰め面で皿にフォークを突き立てる。私はそれを笑顔でいなし、続きを紡いだ。

「私が好きな花を両手一杯に抱えてたら、小さな声で『ちょうだい』という声が聞こえたの。小汚い子供だったわ。女の子だったし、私は花を分けてあげたの。けれど周囲の人間は悪意の籠った目で私を見たわ」

 前世の私は本気で物乞いの子供達が花を欲しがっているのだと思っていた。

「私には、その理由が分からなかった。折角、差し上げたのに失礼な人達だわってね。
 けれどフィンがとった行動は私と全然違うものだったのよ」
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