悪しき令嬢の名を冠する者
「それは……本当?」

「嘘を言ってどうするの?」

 まぁ嘘だけど、と内心舌を出す。俯いた彼女の表情は伺えないが、肩を震わせているのだから涙していないにしても相当ショックなのだろう。

「お話はそれだけかしら? では、これで失礼するわ。貴女も愛して貰えるといいわね」

 極上の笑みと共に毒を吐く。私はそのまま彼女を置き去りにするべく身を翻した。

「お待ちになって!」

「な、なにをなさるの!? 触らないでちょうだい!」

 唐突に腕を掴まれ千鳥足を踏む。ヒステリックに叫びながら腕を振り解こうとするも叶わなかった。
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