悪しき令嬢の名を冠する者
「お疲れになったでしょう?」

「ええ……そうね。足が痛いわ」

「仰せのままに」

 照れ隠しに、そっぽを向けば、彼が微笑しているのが分かった。身体が熱を持っている気がするけれど、気のせいだと思っておこう。

「……甘やかしすぎ」

「お前が甘やかしてやらないからだろ」

「僕は……」

「なんだ?」

「……立場上仕方なく……」

「俺も立場上、仕方なく甘やかしてるだけだ」

 フィン越しに聞こえるユアンの声が萎んでいる気がした。表情は見えないが、思い違いだろうか。

 どうも〝エレアノーラ〟だと言いすぎてしまう節がある。私は僅かに内省し、言葉を紡いだ。
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