悪しき令嬢の名を冠する者
「ユアン?」

「どうなさいました?」

「少し言い過ぎたわ。私、貴方のことが嫌いになれるほど何も知らないもの」

「……はい。ありがとうございます。
 エレアノーラ様、道中お気を付けて。また、お待ちしております」

「ええ」

「またなユアン」

「うん。フィン」

「ん?」

「エレアノーラ様を頼んだよ」

「言われなくても」

 ユアンの声がフィンを通して鼓膜を震わせる。声色が少しばかり晴れていたような気がしたのは思い違いだろうか。
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