悪しき令嬢の名を冠する者
「令嬢と従者かと」

「本当にそう思ってるのか?」

「はい」

「だったらお前の目は節穴だな。親密そうに身を寄せ合うアイツらを、ただの令嬢と従者だと?」

「ヴィンス様?」

「悪い。八つ当たりした……恋とは苦しいものなんだな」

「貴方らしくありませんね。どうなさいました?」

 ドア前に佇んていた彼が絨毯の本に触れる。タイトルを見たかと思えば、探るような視線を向けられ居心地が悪かった。
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