悪しき令嬢の名を冠する者
「〝馬鹿で我儘な末皇子〟が〝おねだり〟するんだよ。〝頭がお花畑な幸せな姫〟は簡単に騙されてくれる。夫の〝愛〟が得たいが為に」

「貴方は御自分が躍らされた〝愛〟で奥方をマリオネットに為さるおつもりですか?」

「躍らされていない人間などいないだろ。俺もお前もレイニーだって」

「ですが……」

「今、大切にするべきものは気持ちじゃない。国を統べる為の矜持だ」

「御意」

 どこまで上手くいくかは采配次第だろう。実際、姫の一声がどれほどの威力を持つか俺には測りかねる。

 国によって違うだろうし、特産品はそれほど貴重だ。それに見合う報酬を用意しなければならない。

「まぁ、どうせ滅びる国だ。赤字にしてなんぼだろ」

 制圧後、彼女の国から得た資源を他国に流し協定を結ばせる。〝今後〟を保証すれば交渉相手だって落ちてくれるだろう。

 国と国の約束は元々〝未来〟を見せるものだ。勝利の一手は魅せ方に限る。
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