悪しき令嬢の名を冠する者
「貴方が此処に来たのは彼の提案でしょう? 私と仲良くなって情報を仕入れてきて、とでも言われたんじゃなくて?」

「……フィン?」

「俺は何も……」

「鎌を掛けただけなのに随分あっさりね……」

 動揺を露わにする俺達に対して肩を落とすレイニー様。ロビンが狼狽した時点でアウトだとは思ったが、まさかここまで見透かされているとは思わなかった。

「まぁ、だから私がちゃんと仲間だってことを証明して欲しいのよ。貴方が自らの目で見て、聞いて、判断なさればいいわ。ロビンの言うことならベルナールも信じるでしょう?」

「どうでしょうか……」

「まぁ、たしかに私が秘密を抱えているのは事実よ」

 戦慄が走った。ベルナールが言っていたことは事実だったのか、という悔しさと、俺にも話せないことなのか、という哀愁が鬩ぎ合う。

 それらを仮面の裏に隠せば、「驚かないのね」と、ぼやく彼女と視線が絡み合った。
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