悪しき令嬢の名を冠する者
〝睡蓮の君へ


 そろそろ私の正体には気付いた頃かな。会いに来てくれるなら喜んで邂逅を祝いたいね。

 少し昔の話をしようか。君がまだ傲慢な、お姫様だった頃の話を。

 君は少女に花をあげたことがあったよね。僕は覚えているよ。君の、あの柔らかな笑みを。

 君は花に似ている。見た目だけは美しい薔薇の花に。棘だらけの君を私はどう抱けばいい? 薔薇の花束でも贈れば満足かな? 三つの蕾に一本の薔薇なんてロマンチックだね。

 開戦はすぐそこだ。美しい花が手折られることのないよう祈っているよ〟
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