悪しき令嬢の名を冠する者
「つくづく詠が上手いのね。吟遊詩人か何かかしら」

「随分熱いラブレターですね」

「ふふ、ロビンにはそう見えるのね」

「薔薇なんて高価なものを贈りたいなんてそうとしか思えません」

「フィン」

「前の手紙を取ってきてくれるかしら?」

「はい」

 即座に彼女の鏡台に向かい引き出しに手を掛ける。その中から一通抜き取れば、淀んだ感情が渦巻いた。

 ロビンのように俺もコレをラブレターだと思っていた。だからこそ愛の言葉を紡ぐ〝男〟に嫉妬を覚えたのだ。俺は想いを伝えられないのに、と。
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