悪しき令嬢の名を冠する者
第32輪*side フィン*
「ピンクの睡蓮の花言葉は〝信頼〟私には程遠い言葉ね。だからこれは該当しないの。
この〝桜色〟が示すのは単純にネリネのこと。ネリネはピンク色の花だから」
「ネリネって?」
「彼岸花に似た形の花よ。花言葉は〝また会う日を楽しみに〟〝忍耐〟〝箱入り娘〟ネリネが似合うと言いながら、その二つを示唆することを記している。つまり彼が言いたいことは――」
「〝また会える日を楽しみに〟つまり、また会おうってこと?」
「私はそう思ったわ。けれど、待ち合わせ場所がどこにも書いてないのよ。折角、次の手紙を待っていたのに残念だわ」
「また、そう言って監視の目を盗むつもりでは?」
「もう、あんなことはしないわ。次はフィンに捕まえて欲しいと思ってるくらいだもの」
歯の浮くような台詞に胸がざわつく。こんなことで〝頼られている〟と考える己に嘲笑が漏れた。歓喜を覚える単純な自身が腹立だしくて仕方ない。
この〝桜色〟が示すのは単純にネリネのこと。ネリネはピンク色の花だから」
「ネリネって?」
「彼岸花に似た形の花よ。花言葉は〝また会う日を楽しみに〟〝忍耐〟〝箱入り娘〟ネリネが似合うと言いながら、その二つを示唆することを記している。つまり彼が言いたいことは――」
「〝また会える日を楽しみに〟つまり、また会おうってこと?」
「私はそう思ったわ。けれど、待ち合わせ場所がどこにも書いてないのよ。折角、次の手紙を待っていたのに残念だわ」
「また、そう言って監視の目を盗むつもりでは?」
「もう、あんなことはしないわ。次はフィンに捕まえて欲しいと思ってるくらいだもの」
歯の浮くような台詞に胸がざわつく。こんなことで〝頼られている〟と考える己に嘲笑が漏れた。歓喜を覚える単純な自身が腹立だしくて仕方ない。