悪しき令嬢の名を冠する者
「似たような話を覚えてない?
 お前が物乞いの子供に食べ物を与え、私が思いついた瞬間の話よ。フィンは私と共に居た」

「覚えています。しかし、私はこの話を聞いたことはありません。ましてや、あの時、アンタの後ろを付いて回るだけの役立たずだったじゃないですか!?」

 自分で言っていて悲しくなる。

 そう、あの時〝花だ〟〝違う〟〝宝石よ〟そうぼやいた彼女の背を見ていることしか出来なかったのだ。

 真意を説明され、やっと理解出来ただけの俺に何が出来ると言うのか。

「落ち着きなさい。私は疑ってるだけで断定はしてないわ」
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