悪しき令嬢の名を冠する者
「何、笑ってるのよ。気持ち悪いわね。
 まぁ、そういうことよ。私が疑ってるのはヴィンスとフィン。当たっているかどうかは分からないわ。今回の手紙に逢瀬の約束は無かったしね」

「今回のは結局どういう意味なの?」

「薔薇の棘には〝不幸中の幸い〟〝不仲中の争い〟って意味があるのよ。でも何を意味するのかまでは……」

「その二つじゃ何も繋がらないね」

「ええ。だからこそ前半と何か照らし合わせられる言葉がないか探っているのだけれど……」

「じゃあ三つの蕾に一本の薔薇は?」

「そんなの聞いたことがないわ。九九九本の薔薇の花束なら知っているけどね」

「どういう意味なんですか?」

「フィンが興味を示すだなんて珍しいわね」

「少し……」

 胸がざわついて。そう言ったら彼女は嗤うだろうか。僅かに嘲笑を浮かべれば不思議そうな顔が目に飛び込んできた。
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