悪しき令嬢の名を冠する者
「九九九本の薔薇の花言葉は〝何度生まれ変わってもあなたを愛する〟よ」

「随分ロマンチックですね」

「ええ。それなら彼が言う〝ロマンチック〟にも当てはまると思うんだけど……」

 顎に手を当て思案する横顔を金糸が撫でる。乱れた髪を耳に掛け、溜息を吐く様に息を吐き出したくなった。

 どうしてこの人は一々美しいのだろう。俺が恋したところで手が届かないというのに愛しくて仕方ない。一度自覚した恋心は膨らみ続け、心を破裂させそうだった。



 伝えたい。

 伝えたい。

 伝えたい。

 伝えなければ零れ落ちてしまう。



 大事な話の最中だというのに、俺の脳は本能に支配され落ち着いてなどくれない。

 自らの中に、こんな感情があるなんて知りたくなかった。知ってしまえば、もう引き返せない。
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