悪しき令嬢の名を冠する者
「貴方のせいで台無しよ。ロビン」

「申し訳ありません。差し出がましいようですが、お遊びが過ぎるかと」

「従僕が随分偉そうに。クビにするわよ」

「そうなさりたいなら私から申し上げることはありません。ですが淑女として……いえ、ヴェーン家の使用人として、お嬢様の手を汚させることは致しません」

「興が削がれたわ。そのみすぼらしい恰好のままうろつかれたら迷惑ね。
 カタリーナ様、本日は失礼するわ。二度と会うことがないことを願って。それでは」

 ドレスの裾を持ち上げ、ゆったりと頭を下げる。私は、そのままヒールの音を立てながら退室した。

 ロビンは顔色一つ変えず、背を付いてくる。そのまま馬車に乗り込めば、運転手が目を白黒させていた。
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