悪しき令嬢の名を冠する者
第38輪*side レイニー*
「俺は貴族に両親を殺されたんだ」
「突然どうしたの?」
「理由を話すべきだと思ったんだよ。秘密には秘密でのやりとりを」
「話したいなら聞いてさしあげるけど、別に話さなくても構わないわよ」
「じゃあ話したいから聞いて貰える? ずっと男のふりをしてるのもキツかったから」
「ドレスを着たいの?」
「いや、ひらひらした洋服は嫌いなんだ。でも俺が俺で在れる場所が……」
言葉は最後まで紡がれない。それでもなんとなく分かってしまった。彼女は私に同じ匂いを感じたのだと。
エレアノーラは一人。けれど魂は二つ在るようなものだ。確立した自己はなくとも、どうしても人格にぶれが生じてしまう。そこを嗅ぎ取ったのかもしれない。
「突然どうしたの?」
「理由を話すべきだと思ったんだよ。秘密には秘密でのやりとりを」
「話したいなら聞いてさしあげるけど、別に話さなくても構わないわよ」
「じゃあ話したいから聞いて貰える? ずっと男のふりをしてるのもキツかったから」
「ドレスを着たいの?」
「いや、ひらひらした洋服は嫌いなんだ。でも俺が俺で在れる場所が……」
言葉は最後まで紡がれない。それでもなんとなく分かってしまった。彼女は私に同じ匂いを感じたのだと。
エレアノーラは一人。けれど魂は二つ在るようなものだ。確立した自己はなくとも、どうしても人格にぶれが生じてしまう。そこを嗅ぎ取ったのかもしれない。