悪しき令嬢の名を冠する者
「新しいシュプギーの手紙は、皆、読んだわよね」

「勿論。君が隠していた3つの蕾に1本の薔薇の意味、教えてくれる?」

「私が隠していることに気付いてたのね」

「気付かれてないと思ってたんだ。まさか花言葉だったなんてねぇ。教養も何もない俺達には分からなかったよ」

「あれの花言葉は〝あのことは永遠に秘密〟」

「君が変わったことに関係あるのかな?」

「ええ。でも疑わないで聞いて欲しいの。私は貴方達を騙すつもりも、いなすつもりもないわ。だからシュプギーとの約束を破るの」

 私の言葉に静かに耳を傾けるシュプギー。これから何をしようとしているか分からないわけではないというのに、あまりにも涼しい顔をしているものだから此方が錯覚してしまいそうになる。

 間違っているのは自身かもしれない、と。

「ごめんなさいね。シュプギー。私はいつもダメな姫で……なのに守ってくれて……守ろうとしてくれてありがとう」

 少しでも彼の心を揺さぶれているだろうか。私は弱めそうな語気を叱咤し言葉を紡いだ。
< 243 / 374 >

この作品をシェア

pagetop