悪しき令嬢の名を冠する者
「勘違いなさらないでね。ユアンは邪魔をしようと思って手紙を送っていたわけじゃないわ。そうでしょう?」

「はい」

「私を看取ってくれたのは貴方ね?」

「はい」

「ずっと会いたかったわ」

 答えを見つけるのは意外にも簡単だった。彼らの性格と私との関係性。それを鑑みるだけでコトは済んだのだ。

 フィンなら自らが転生者であることを隠さないだろう。私に一番近い彼ならば自らで止めにかかった筈だ。

 ヴィンスなら時を計らって自らの過去を明かしただろうし、それをしないということは彼も違う。

 そうなるとベルナールも違ってくるのだ。シュプギーの人物像に沿わないというのが大方の理由だが、転生者ならもっと私との距離を縮めようとしたに違いない。ロビンは言わずもがな。あそこまでの正直者がシュプギーであるわけがない。

 そうなると残りはユアンになる。現世で私との関わりが薄い彼が何かを進言することはないだろう。彼の性格は比較的内向的であるし、私との距離はけして近いものではない。

 自分で言った通り、私はユアンを嫌えるほど彼のことを知らないのだ。それほど絶妙な距離感の私に対し、彼が何を言えたというのだ。

 こんなまどろっこしい方法をとったのは、私達の関係性が故だった。

 ゆったりとした動作で立ち上がり彼に近付く。向かいあえば両手を広げるユアンがいた。
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