悪しき令嬢の名を冠する者
「私もです。抱きしめても構いませんか?」

「構わなくてよ」

 彼の瞳が揺らぎ、腕に抱き寄せられる。それに身を委ねていれば、背で狼狽する皆の気配が感じ取れた。

「お前達はどういう関係だ!?」

 意外にも初めに声を上げたのはヴィンスで、解かれた抱擁後に見上げた表情は恐ろしいものだった。

「説明しますよ。全部」

 謎が解ける。私すら知らない彼の正体が。

 ユアンがシュプギーだとは分かっても、前世での彼が何者かまでは分からなかった。思い出せなかったのだ。

 だからこそピースが何もかも揃わない状態で告げた。〝真意を教えて欲しい〟と。
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