悪しき令嬢の名を冠する者
「信じて欲しいとは思っているけど、信じろとは言わないわ。私だって逆の立場なら、こんな話、簡単には信じられないでしょうしね。
 でも、これが〝手紙の真実〟約束はちゃんと守りましてよ」

「じゃあアンタが変わったのは……」

「記憶を思い出したからね。フィン、お前は本当に鋭かったわ」

「今迄のレイニー様は?」

「私の中にちゃんといるわ。強いて言うならフィンが感じていた違和感は〝リーリエ〟が主だったからでしょうね。けれどお前に叫ぶ〝大嫌い〟は間違いなく〝エレアノーラ〟のものよ」

 フィンの問いに対し、エレアノーラ様は、ふわりと笑む。柔らかな表情はリーリエ様のもので、悪しき令嬢と言われたエレアノーラ様の姿形もなかった。
< 261 / 374 >

この作品をシェア

pagetop