悪しき令嬢の名を冠する者
「そういうわけだよ。ベルナール。僕達は別に共謀して何かをしようとしてたわけじゃない。ただのエゴさ」

「そう。ならいいんだけどさ。
 それにしても前世からの恋人なんて本当にあるんだね。まるで運命だ」

「僕達は恋人じゃない。揶揄わないでくれる?」

「ほんとにそうかな? ここにいる誰もがそう思ったと思うけど? だから怖い顔してたんだよね? ヴィンス、とフィンもかな?」

 言葉を詰まらせる二人に溜息を吐く。僕は端から想いの丈をぶつけるつもりなどない。ヴィンス様の背中を押すつもりでいるのだから。

「話は終わりだよね。ベルナール」

「そうだね。夜も深い。そろそろ休もうか」

「少し店を借りてもいいかな?」

「構わないよ」

 大口を開けて欠伸をかますベルナールに礼を告げる。彼は後ろ手に手を振ると、ロビンを連れて二階へ上がっていった。
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