悪しき令嬢の名を冠する者
「隠しても仕方ないな。お前が好きだ。レイニー」

「それは……」

「恋、というやつかな」

「随分あっさりとした告白ね」

「明日は決行日。休む時間の方が大切だろ?」

「答えは?」

「この戦が終わってからにしよう。どうせ隣国との同盟は一度破綻になる。その際、今の婚姻関係も白紙に戻るだろ。
 だから、その時、俺の妃になるか否か答えてくれ」

「随分と悠長なことを言うのね」

「長引いても三日だ。むしろ三日で落としてみせる」

「凄い自信。さすが次期国王は違いますわ」

「次期王妃候補になる気はないかな? レイニー」

「ご冗談を」

 朗らかな雰囲気に二人が笑みを深めている。それを和やかな心持で眺め、やはりこれで良かったのだと胸に手を当てた。
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