悪しき令嬢の名を冠する者
「レイニーが国をどうにかしようと奔走していたのは分かっている。民を愛してのことだろう。
 花を愛でても構わない。宝石に愛を詠っても構わない。近しい人に愛情を伝えても構わない。お前が何を好きになっても、愛しても、それは自由だ。
 でも……俺の傍にいてくれないなら……俺のモノになってくれないなら……誰のモノにもならないでくれ……!」

 彼の愛情は彼女にとって重荷でしかない。けれども分かる気がした。誰のものにもならないで欲しいという心根が。

 誰かのものになるのならヴィンス様がいい。そう思って彼を焚きつけたのはエゴに過ぎない。

 事実、友人を傷付けながら諦めるように説いているのだ。血も涙もない自身が鬼のように思えた。
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