悪しき令嬢の名を冠する者
「私は貴方が好きよ。でもね、ヴィンスが向けてくれてる気持ちとは違うと思うわ。だからね、私を落としてごらんなさい?」

「ククッ……結局、答えを聞いてしまった」

「ヴィンスがおかしなことを言うからでしょう?」

「悪い。俺も不安になってるのかもな」

「先陣切って戦うんですって? 凄い勇気ね」

「死ななきゃ俺の勝ちだ」

「〝俺達〟でしょう。貴方には背中を預けられる仲間がいるわ」

「勝利の女神が微笑んでくれれば百人力だな」

 彼は柔らかな声を携え、そのまま彼女の唇を奪った。

 衝撃の光景に目を奪われる俺達。彼女も相当驚愕したのだろう。微動だにせず抵抗する素振りも見られない。

 彼はそれをいいことに彼女を抱き込むと、唇を更に深く重ねていた。
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