悪しき令嬢の名を冠する者
「早く行け! 王子として最後の命だ!」
「承知しました! ヴィンス様、生きて再会を」
「ああ」
再会を、そう言わない彼の背が語っていた。「ここを死に場所に選んだのだ」と。
それを否定したいが為に、ユアンに抱えられた身体で懸命に抵抗した。
軽々と私を抱き上げた彼が走る。扉が閉まる瞬間、私の目にはヴィンスが笑っているように見えた。落とした視線の先では、フィンが何かを象っている。
必死に手を伸ばし、懸命に叫ぶ。しかし、彼らの想いが私に届かぬように、私の言葉が彼らに届く筈もなかった。
「いやよ……届かない……届いていないわ……」
刹那に起こった出来事が無情にも遮られる。灼けたように痛む喉を掻き毟りたい気分だった。
「承知しました! ヴィンス様、生きて再会を」
「ああ」
再会を、そう言わない彼の背が語っていた。「ここを死に場所に選んだのだ」と。
それを否定したいが為に、ユアンに抱えられた身体で懸命に抵抗した。
軽々と私を抱き上げた彼が走る。扉が閉まる瞬間、私の目にはヴィンスが笑っているように見えた。落とした視線の先では、フィンが何かを象っている。
必死に手を伸ばし、懸命に叫ぶ。しかし、彼らの想いが私に届かぬように、私の言葉が彼らに届く筈もなかった。
「いやよ……届かない……届いていないわ……」
刹那に起こった出来事が無情にも遮られる。灼けたように痛む喉を掻き毟りたい気分だった。