悪しき令嬢の名を冠する者
「ユアン、命令よ! 戻りなさい!」

「嫌です」

「私を誰だと思ってるの!? 身分が上の私に口答えをするなんて許さないわ!」

「僕は王子から命令された。君を守れと」

「そんなの知らないわ! 殿方は皆勝手過ぎるのよ! どうしていっつも私の話を聞いてくださらないの!?」

「それはエレアノーラ様が愛されていた証拠だよ」

「え?」

「皆が皆、〝貴女だけは〟と願った結果だ。だから僕は守る。王子の命を」

 横抱きになっていた身体が浮き、片腕の上に座る形で支えられる。空いた方の手で剣を用いた彼は、襲ってくる衛兵を薙ぎ倒していった。
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